投手に走り込みは必要?「たくさん走れば速くなる」の誤解を投手専門コーチが解説【小・中学生】

「ピッチャーはとにかく走り込め」——少年野球の現場では、今もよく聞く言葉です。
でも、たくさん走っているのに球は速くならない。むしろ練習後はヘトヘトで、投げるとフォームが崩れる。
そんなお子さんを見て、「この走り込み、本当に意味あるの?」と感じたことはありませんか。
こんにちは。投手専門オンライン野球塾・投Laboの野村亮太です。元独立リーガーの左投手として、また指導者として、「走り込み」に悩む小・中学生と保護者をたくさん見てきました。
この記事では、投手に走り込みは必要なのか、球速アップとの正しい関係を、野球未経験の保護者にも分かるようにやさしく解説します。
結論: 「長い距離をたくさん走れば球が速くなる」は思い込みです。速い球に必要なのは一瞬の力(瞬発力)なので、投手に効くのは短い距離の全力ダッシュ。長距離の走り込みも目的があれば役立ちますが、大事なのは「量」より「目的」です。
「走り込めば速くなる」は本当?
先に結論をお伝えすると、長い距離をただたくさん走っても、球速は上がりにくいというのが今の考え方です。
近年は海外を中心に、「投手は長距離を走り込む必要はない」という声が広まっています。実際、海外のトップレベルでは、投手が何キロも走り込む習慣はほとんどありません。
もちろん、走ること自体が悪いわけではありません。問題なのは、「とにかくたくさん走ればいい」という"量だけ"の発想です。
なぜ量だけではダメなのか。次で見ていきましょう。
なぜ長距離だけでは速くならないの?
ボールを速く投げるのに必要なのは、一瞬で大きな力を出す**「瞬発力」**です。
ピッチングは、1球を全力で投げて、次まで少し休む、その繰り返しです。長い時間ずっと動き続けるマラソンとは、体の使い方がまったく違います。
- 投球 = 短い全力を、休みをはさんで繰り返す
- 長距離走 = ゆっくりの力を、長く続ける
長距離をたくさん走る練習ばかりだと、体は「ゆっくり長く」に慣れていきます。すると、投球に必要な瞬発力はむしろ育ちにくくなってしまうのです。
さらに、走りすぎて疲れがたまると、肝心の投球練習でフォームが崩れます。これでは本末転倒ですよね。
投手に効くのはどんな走り方?
「じゃあ走らなくていいの?」というと、そうではありません。大切なのは、走る量ではなく**「何のために走るか」**です。
走り方は、目的で使い分けるのがコツです。
| 走り方 | 主な目的 | 投手にとって |
|---|---|---|
| 短い全力ダッシュ(休みをはさむ) | 瞬発力・出力を高める | ◎ 球速につながりやすい |
| 軽いジョグ(短時間) | 練習後の疲労回復・体をほぐす | ◯ 目的があれば有効 |
| 長い距離の走り込み | スタミナ・体づくり | △ 目的次第・やりすぎ注意 |
いちばん投球に近いのは、短い距離を全力で走って、しっかり休むダッシュです。
距離や休む時間は目安で構いませんが、「全力を出しては休む」というリズムが、投球のリズムとよく似ています。
走り込みが「活きる」場面もある
ここで誤解してほしくないのは、走り込みが全部ムダというわけではないということです。
- 試合でたくさん投げる先発投手には、ある程度のスタミナも必要です。
- 体がまだできていない時期の土台づくりとして、走ることには意味があります。
- 練習後の軽いジョグは、疲れを流す回復にも役立ちます。
大事なのは「何のために走るのか」をはっきりさせること。目的のない長距離は、時間と体力をすり減らすだけになりがちです。
ただし成長期の小・中学生は、疲労のためすぎが怪我のもとになります。走り込みで体がクタクタになり、投球フォームが崩れるくらいなら、走る量は減らして構いません。
投げすぎや疲れのサインにも、ふだんから気を配ってあげてください(子どもの投げすぎサインと休養の目安)。
家でできること・親が見るポイント
難しく考える必要はありません。次のことを意識するだけで十分です。
- 走るなら、短く全力を基本に。長くダラダラは避ける。
- 走った後に投げてみて、フォームが崩れていないかを見る。
- 疲れをためない。回復(睡眠・食事)も練習のうち(成長期の食事と回復)。
そして球速そのものは、走り込みの量より下半身から生み出す力の伝え方で大きく変わります(下半身の使い方)。
体づくりも、重い器具を使わず自宅でできる自重トレーニングから始めれば十分です。球速アップの全体像はこちらの記事にまとめています。
投Laboが考える「走り込み」
僕自身、体が小さく非力な左投手でしたが、長距離をひたすら走り込んで速くなったわけではありません。
力を抜いて、下半身の力を効率よくボールに伝えること。それが、非力でもボールを走らせる(球が速く伸びる)コツでした。
実際、全力で投げないほうが速くなるのと同じで、走り込みも「量」で勝負するものではないのです。
投Laboが大切にしているのは、「とにかく走れ・投げ込め」という根性論ではなく、怪我をさせずに・課題を1つずつ・効率のいい形に整えることです。
走り方やフォームが合っているかは、外から見ないと分かりません。
投Laboでは、スマホで撮った投球動画を投手専門コーチが分析し、保護者向け+お子様向けの2部構成レポートでお返しします(スマホでのフォーム動画の撮り方)。
初回の動画分析は無料なので、走り込みを増やす前に、まずお子さんのフォームを客観的に見るところから始めてみませんか。
まとめ
- 「たくさん走れば速くなる」は思い込み。長距離の走り込みだけでは球速は上がりにくい。
- 投球に必要なのは瞬発力。効くのは短い全力ダッシュ+しっかり休むこと。
- 走り込みも、目的(スタミナ・体づくり・回復)があれば活きる。大事なのは量より目的。
- 成長期は疲労のためすぎに注意。フォームが崩れるなら、走る量は減らしてよい。
- 球速は走り込みより、下半身の使い方・脱力・体づくりで変わる。
「走った量」ではなく「何のために走るか」。それだけで、練習はぐっと投球につながるものになります。
よくある質問
Q. ピッチャーは走り込みをしなくてもいいですか?
「まったく走らなくていい」わけではありませんが、長い距離をたくさん走る必要はありません。
投球に効くのは、短い距離を全力で走って休むダッシュです。長距離は、スタミナや体づくりという目的があるときに、疲れすぎない範囲で取り入れれば十分です。
「とにかく量を走る」より、下半身の使い方を覚えるほうが、球速には近道です。
Q. 走るなら、どんな走り方がいいですか?
短い距離を全力で走り、しっかり休んでからまた走る——これが投球に一番近い走り方です。
「全力を出しては休む」というリズムが、1球ずつ全力で投げるピッチングと似ているからです。
反対に、目的なくダラダラ長距離を走るのは、疲れをためやすいので気をつけてください。
Q. 走り込みで球速は上がりますか?
長距離の走り込みだけで球速が上がることは、あまり期待できません。
ボールを速く投げる力は瞬発力であり、持久力とは別のものだからです。球速を上げたいなら、全力で投げない脱力や下半身の使い方、体づくりのほうが効果的です。
Q. 走った後に肩やひじが痛いと言います。大丈夫ですか?
痛みは「疲れのサイン」であることが多いので、まずは休ませてあげてください。
とくに成長期の子どもは、疲労がたまると怪我につながりやすい時期です。走り込みや投球でフォームが崩れているサインのこともあります。
痛みや張りが続くときは、様子見せず、整形外科などの医療機関に相談してください。