少年野球のピッチャーが打たれる原因と直し方|打たれない投手の特徴を投手専門コーチが解説

「うちの子、最近打たれてばかりで…」——お子さんの試合を見て、こう感じたことはありませんか。
打ち込まれてマウンドでうつむく姿は、親のほうもつらいものです。「球が遅いのかな」と、原因がわからず悩んでしまいます。
こんにちは。投手専門オンライン野球塾・投Laboの野村亮太です。独立リーグ(地域のプロリーグ)で投げてきた元左投手で、僕自身も現役のころは、しょっちゅう打たれていました。
結論:
- 打たれる原因は、球速だけではありません。僕の現場で多いのは、①力のないストライク ②内・外の投げ分け不足 ③体の早い開き、の3つです。
- 打たれない投手との違いは、体の開きを最後まで我慢できているか。開きが早いと、打者にボールがよく見えてしまいます。
- 原因は子どもごとに違います。まず動画で「球の質」と「体の開き」を見てあげるのが近道です。
この記事でわかること
- 少年野球のピッチャーが打たれる、よくある3つの原因
- 「打たれない投手」の特徴と、球速が同じでも差がつく理由
- 家でできるセルフチェック・練習ドリルと、打たれた日の声かけ
なぜ打たれる? いちばん多いのは「力のないストライク」
もちろん、球が速いに越したことはありません。でも、打たれる原因は球速だけではありません。
僕の指導でいちばん多いと感じるのは、「力のないストライク」を投げてしまうことです。
「力のない」とは、速さではなく、回転や勢いが足りないという意味です。
四球(フォアボール)を恐れて当てにいくと、腕がゆるみます。すると、勢いの死んだまっすぐ(=棒球)を、ゾーンにそっと置きにいく形になります。
これが、打者にとっていちばん打ちやすい球です。指導の現場で多い原因を、3つに絞って見ていきます。
原因①:ストライクを「置きにいって」しまう
いちばん多いのがこれです。カウントが悪くなると、当てにいくように腕がゆるみ、力のない真ん中の球になります。
現場から: 打たれる子に多いのは、ストライクが入らなくなって、そのうち「ストライクを入れる力のないボール」を置きにいくパターンです。四球を恐れるほど、かえって甘い球になります。
四球を減らそうとして棒球になる。この悪循環が、打たれる入り口です(→コントロールが安定しない原因)。
原因②:内・外の投げ分けができず、真ん中に集まる
次に多いのが、コースの投げ分けです。球がいつも真ん中に集まると、打者は的をしぼりやすくなります。
ストライクゾーンを9マスに分けるような、細かい投げ分けは要りません。でも、せめて内側(インコース)と外側(アウトコース)の2つには投げ分けたいところです。
現場から: 中学生になると、変化球がストライクに入らず、結局ストレートに的をしぼられて打たれる子も増えます。まずは内・外の投げ分けが先です。
僕は、変化球を増やす前に、内・外のストレートを投げ分ける練習を優先しています(→変化球は何歳から?)。
原因③:体が早く開いて、球が「見えて」しまう
3つめが、投げる前に胸が正面を向く「体の開き」です。開きが早いと、打者からボールがよく見えてしまいます。
しかも、開きが早いと球が「抜け」やすくなります。抜けるとは、指にかからず力が逃げ、フワッと浮いたり外れたりすること。
こうなると球の質(回転や勢い)も落ち、速さのわりに打ちやすい球になります(→体が開く原因と直し方)。
打たれない投手の特徴は「体の開きを我慢できる」こと
では、球速がそこまで速くないのに打たれない子は、何が違うのでしょうか。
僕の考えでは、いちばんの違いは「体の開き」です。
開きを我慢すると、打者は「速く」感じる
ギリギリまで体の開きを我慢し、そこから一気にボールが出てくる。すると打者は、実際のスピード以上に速く感じます。
逆に開きが早いと、打者は早い段階でボールを見つけられます。球速の割に打ちやすくなるのです。
現場から: 開きを我慢できている子は、球速が同じでも、打者から「見えづらい」投手になります。僕がまず見るのは、球の質と体の開きです。
研究でわかっていること・現場の見立て
ここは、言い切れる部分と、そうでない部分を分けてお伝えします。
- 研究でわかっていること:体が早く開く(早い体幹の回転)と、肩やひじの負担が増える傾向が報告されています。
- 現場の見立て:僕の指導では、開きが早い子は球の勢いが落ち、コントロールも安定しにくい印象です。「打者が速く感じる」のも実感です。ただし、当てはまらない子もいます。
大事なのは、開きは「気合」で我慢するものではないこと。体の使い方の順番で決まります(→体が開く原因と直し方)。
🔍 家でできるセルフチェック
どの原因が当てはまるかは、家でもある程度たしかめられます。次の3つを見てみてください。
- 10球投げて、何球"強い"ストライクが入るか:置きにいかず、勢いのあるストライクが8球以上入れば合格です(投Laboの練習で使っている目安で、研究の基準ではありません)。
- 球が真ん中に集まっていないか:内側・外側に的(コーンやペットボトル)を置き、5球ずつ投げ分けられるか見ます。真ん中ばかりなら、投げ分けの練習が必要です。
- 前足がついた瞬間、胸がもう正面を向いていないか:スマホのスロー再生で見ます。踏み出した足が地面につく前に胸が開いていたら、開きが早いサインです。
これらで当たりをつけられます。ただし、家庭のチェックだけで原因を一つに決めるのは、簡単ではありません。
- 「球の質」も「体の開き」も一瞬の出来事で、家では見きわめにくい
- 同じ「打たれる」でも、置きにいくクセの子と、開きが早い子では、直し方が変わる
迷ったら、スマホで投球動画を撮っておきましょう。あとで原因を落ち着いて見返せます(→スマホでのフォーム動画の撮り方)。
🏋️ 打たれない投手になる練習ドリル
原因の見当がついたら、練習に移ります。全力で投げなくても、制球(コントロール)と開きは育てられます。
① 内・外 2分割の的当て
- やり方:内側と外側に的(コーンやペットボトル)を置き、コースを狙って投げ分ける。
- 回数:内・外それぞれ10球ずつが目安。
- 親のチェック:真ん中に集まっていないか。狙ったコースの近くに行っているか。
- できているサイン:内・外を言われた通りに投げ分けられる。
② 壁シャドーで「胸を最後まで隠す」
- やり方:壁やネットに横向きで立ち、踏み出した足がつくまで胸を壁側に見せないイメージで、ボールを持たずに投球動作をする。
- 回数:10回×2セットが目安。
- 親のチェック:前足がつく前に、胸が正面を向いていないか。
- できているサイン:胸を最後まで隠せて、腕がしっかり振れる。
③ カウント別スロー(不利でも置きにいかない)
- やり方:「3ボール1ストライクから」と声をかけてから投げる。四球が近い不利な場面でも、置きにいかず勢いのあるストライクを投げる練習。
- 回数:10球が目安。
- 親のチェック:不利なカウントの設定でも、腕がゆるんでいないか。
- できているサイン:四球が近い場面でも、力のあるストライクが入る。
④ 近い距離で「強い」キャッチボール
- やり方:5〜7メートルの近い距離で、球の質(回転と勢い)だけに集中して投げる。
- 回数:10球×2セットが目安。
- 親のチェック:フォーム全体でなく、球の勢いと回転だけを見る。
- できているサイン:近くても、手元まで勢いが落ちない、強い球になる。
打たれた日にやりがちなNG声かけと、かけたい言葉
打たれた日の帰り道。親のひとことが、次につながるか、傷を深くするかを分けます。
やりがちなNGは、子どもの話を聞く前に「あれがダメ」「これがダメ」と否定から入ることです。
現場から: それはあくまで、フィールドの外から見た親の感想です。マウンドの中でしか分からないこと、感じることもあります。まず本人の口から、状況と理由を聞いてあげてください。
かけたい言葉は「あれは、なんであんなふうになっちゃったの?」という問いかけです。
否定ではなく質問にすると、子どもは自分で状況・理由・反省点を言葉にします。「同じミスは繰り返さない」ための反省は、ここから生まれます。
打たれること自体は、悪いことではありません。大事なのは、なぜ打たれたのかを本人が考えられること。落ち込んで元気がないときは、立ち直りの手助けも大切です(→打たれた後の立ち直り方)。
痛みがあるときは、投球を止めて
制球や開きの練習は、痛みがない状態でおこなうのが前提です。
肩・ひじ・手首などに痛みがあるときは、無理に投げず、まず休みましょう。痛みが続くときは、整形外科(できればスポーツ整形)で診てもらってください。
とくに成長期は、投げすぎや疲れがたまると、制球もフォームも崩れます。打たれ出したときこそ、球数と休養にも気を配ってあげてください。
「打たれる原因」は、動画で見るのが確実
セルフチェックで当たりをつけても、最後の決め手は「外からの目」です。
僕が打たれる子の動画で最初に見るのは、球の質と体の開きです。どちらも一瞬の出来事で、原因も子どもによって違います。
だからこそ、投げ方を客観的に見てもらうと、直す一点がはっきりします。「置きにいくクセ」なのか「開きの早さ」なのか。原因が分かれば、練習は変わります。
投Laboは「たくさん投げ込めば直る」という根性論はとりません。原因を一つに絞り、そこだけを直します。
投Laboでは、スマホで撮った投球動画を投手専門コーチが分析し、保護者向け+お子様向けの2部構成レポートでお返しします。
初回の動画分析は無料です。カード情報も要りません。お子さんが「なぜ打たれているのか」を、まず一緒に見るところから始めてみませんか。
まとめ
打たれる時期は、上達の途中に必ずあります。あわてず、次の順番で整えていきましょう。
- まず動画で「球の質」と「体の開き」を見て、原因の見当をつける
- 原因に合わせて、内・外の的当て・壁シャドー・カウント別スローを続ける
- 打たれた日は否定から入らず、「なんであんなふうになったの?」と問いかける
球速を上げるより先に、力のあるストライクと体の開き。ここが、打たれない投手への近道です。
よくある質問
Q. 「球が遅いから打たれる」と言われます。速くすれば打たれなくなりますか?
速さだけでは解決しないことが多いです。球速が同じでも、制球と体の開きで打たれ方は大きく変わります。まずは力のあるストライクと、内・外の投げ分けを優先しましょう(→球速が伸び悩むときに見直すこと)。
Q. 変化球を覚えれば、打たれにくくなりますか?
中学生だと、変化球がストライクに入らず、かえってストレートに的をしぼられる子が多いです。まずは内・外のストレートを投げ分けるのが先です。
変化球とひじの負担については、別記事でくわしく解説しています(→変化球は何歳から?)。
Q. 「ストライクを取りにいくな」と言うと、今度は四球を連発します。どうすれば?
「取りにいく(置きにいく)」と「力のあるストライクを投げる」は違います。目指すのは、勢いを保ったままゾーンに入れること。的当てで、力を抜かずにコースを狙う練習が効きます。
Q. 試合で急に打たれ出したら、交代させるべきですか?
疲れや球数のサインが出ていれば、無理は禁物です。フォームが崩れて開きが早くなっているときは、体からの黄色信号のこともあります。球数と表情を見て判断してあげてください。
Q. 打たれるのが怖くて、腕が振れなくなっています。どうすれば?
「打たれたくない」と思うほど、置きにいって甘い球になり、また打たれる悪循環に入りがちです。
まずは動画で原因を切り分け、「直す一点」を決めると、思い切って腕が振れます(→打たれた後の立ち直り方)。