左ピッチャー(左投手・サウスポー)とは?有利な理由と、小・中学生の伸ばし方

「左投げだから有利だね」と言われるけれど、何がどう有利なのか分からない——そんな左ピッチャーの保護者の方へ。
こんにちは。投手専門オンライン野球塾・投Laboの野村亮太です。私自身が左投手で、体が大きいわけでも飛び抜けて速かったわけでもありませんが、独立リーグまで投げ続けました。
結論:
- 左ピッチャー(左投手・サウスポー)=左手で投げる投手。プロの投手でも、およそ3割しかいない
- 効いているのは球の角度より「左が少ない=打者が見慣れていない」ことだと、私は考えている
- 小・中学生は、無理な角度づけより正しいフォーム→外角の制球→緩急・牽制の順で伸ばす
この記事でわかること:
- 左ピッチャーとは何か、左投げの割合と、有利と言われる理由
- 「クロスファイヤー」と「左は球速が遅い」の本当のところ
- 小・中学生の左投手が伸ばす順番と、家でできるチェック・ドリル
左ピッチャー(左投手・サウスポー)とは
左ピッチャーとは、左手でボールを投げる投手のことです。左投手、左腕(さわん)、サウスポーとも呼ばれます。
サウスポーの「ポー(paw)」は英語で「手」のこと。由来には、アメリカの球場で左投手の投げる腕が南(south)側を向いたから、など諸説あります。
どれくらい少ないのかというと、次のとおりです。
| 比べるもの | 左の割合(目安) |
|---|---|
| 一般の人の左利き | およそ1割 |
| プロ野球の選手全体の左投げ | 2割弱 |
| プロ野球の投手の左投げ | およそ3割 |
※プロ野球の登録選手を集計したデータ(2020年時点)では、投手の左投げは約29%、選手全体では約17%でした。
投手は他のポジションより左が多いのですが、それでも10人に7人は右投げ。打者がふだん対戦するのは、ほとんど右投手です。
左ピッチャーが有利と言われる3つの理由
① 打者が「左の球」を見慣れていない
右投手ばかりと対戦している打者にとって、左投手の球は見慣れない球です。その見慣れなさが、そのまま武器になると私は考えています。
② 左打者は、左投手をとくに打ちにくい
プロ野球の対戦成績では、左打者は左投手を打ちにくい傾向がはっきり出ています。
| 対戦 | 打者の打ちやすさ |
|---|---|
| 左打者 × 左投手 | 打ちにくい(投手が有利) |
| 右打者 × 左投手 | 比較的打ちやすい |
大事な場面で、左打者に左投手をぶつける起用がよく見られるのはこのためです。
③ 一塁ランナーが正面に見える
左投手は、構えたときに一塁ランナーが正面に見えます。そのぶん牽制(けんせい=ランナーをアウトにねらう送球)で有利です。
くわしくは左ピッチャーの牽制とクイックにまとめました。
本当の理由は「角度」より"希少性"
「左投手は球の角度が独特だから打ちにくい」と思われがちです。角度の効果がゼロとは言いませんが、効いているのは"見慣れていない"ことのほうが大きいと、私は考えています。
つまり、左であるというだけで、すでに武器を持っているということ。無理な投げ方で変わった角度を作る必要はありません。
「右投げに直すべき?」と迷う方は、左利きの子は右投げに直すべき?もあわせてどうぞ。
「クロスファイヤー」のよくある誤解
左投手の話でよく出てくるのが「クロスファイヤー」です。右打者の内角へ、体に向かうように斜めに投げ込むストレートを指します。
"左の決め球"のように語られますが、誤解が2つあります。
- 左投手だけの武器ではない:本来は利き腕に関係なく、対角へ投げ込むストレートのこと。右投手が左打者の内角を突くのも同じです
- 万能の決め球ではない:少し甘くなると真ん中を通り、外へ逃げれば長打になりやすい。制球と球の力がそろって初めて成立する、上級者向けの球です
「サウスポーは球速が遅い」って本当?
よく検索される疑問なので、データで見てみます。
メジャーリーグの2007〜2019年を集計した分析があります。100イニング以上投げた投手のストレートの平均は、右が93.3マイル、左が91.8マイルでした。
差はおよそ時速2.4km。たしかに右のほうが速いのですが、その程度の差です。
ただし、これは「左だから速く投げられない」という意味ではありません。理由ははっきり分かっていませんが、次のような見方があります。
- 左は速さ以外の武器が効くぶん、球速が最速でなくてもプロで起用されやすいのではないか、という見方
- つまり「左だから遅い」のではなく、速くなくても通用しているから平均が下がる、という考え方です
どちらも確かめられた話ではありません。ただ、少なくとも「左は球が速くならない」という決まりはありません。
私自身も、速さで押し勝ってきたタイプではありません。左は速さだけで勝負しなくていい——これが、左ピッチャーのいちばん心強いところです。
球速を上げること自体は、もちろん味方になります(球速アップの方法)。ただ、順番としては土台が先です。
小・中学生の左ピッチャーが伸ばす順番
育成年代で「変わった角度づけ」や「クロスファイヤー」を強く意識させるのは、おすすめしません。
左の武器は、正しいフォームと制球という土台の上でしか活きないからです。体を早く開くクセは制球を乱し、肩やひじの負担も増やします。
優先順位は、こうです。
- 正しいフォームを固める(体の開きを我慢する・下半身と体幹を使う)。土台は右も左も同じです(投球フォームの正しい作り方)
- 外角の制球を上げる。希少性は、ストライクゾーンをていねいに使えてこそ活きます(コントロールを良くする方法)
- 緩急と牽制を足す。同じ腕の振りで速い球とゆるい球を投げ分けられると、左の見慣れなさがさらに効きます
左投手の土台ができているか、家でチェック
次の3つを、親御さんが見てあげてください。左投手は、軸足が左足、踏み出す足が右足です。
| チェック | やり方 | 合格の目安 |
|---|---|---|
| ① 体が早く開いていないか | キャッチャーの後ろからスマホで10球撮る | 右足が着いた瞬間、胸がまだキャッチャーを向ききっていない(10球中8球) |
| ② 外角に投げられるか | 相手に外角(打者から遠い側)へミットを構えてもらう | 10球中6球、ミットが大きく動かずに捕れる |
| ③ 投げ終わりに止まれるか | 投げ終わりの形を見る | 右足1本でぐらつかず止まれる(10球中8球) |
※合格の目安は、投Laboの指導で使っている練習目標です。研究で決まった基準ではありません。1つできなくても、それだけで「フォームが悪い」とは判断しません。
①ができていないのに角度をつけようとすると、フォームがどんどん崩れます。まず①から見てあげてください。
ここで大事なことを1つ。同じ「左投手の伸び悩み」でも、原因は子どもによって違います。 開きが原因の子もいれば、軸足のためや腕の振りが原因の子もいます。
その切り分けは、実際の動画を見ないと正確にはできません。気になる所があれば、まずキャッチャーの後ろと真横から撮って見比べてみてください。
左投手の土台をつくるドリル4つ
回数は目安で、週2〜3回で十分です。
① 着地で止まるステップ
やり方:構えから右足を踏み出し、着地した形で2秒止まる。胸がまだキャッチャーを向ききっていないかを確かめてから、ゆっくり投げ切る(ボールなし)。 回数:5回×2セット。 親が見るところ:止まったときに、胸が先にキャッチャーを向いていないか。 できているサイン:止まった形で、グラブ側の腕が胸の前にある。
② 外角ねらいのキャッチボール
やり方:7〜10mの距離で、相手に外角の低めへミットを構えてもらい、そこをねらって投げる。 回数:10球×2セット。 親が見るところ:外をねらったとき、投げ終わりに体がぐらついて横に流れていないか。 できているサイン:10球中6球、ミットの近くに集まる。
③ 同じ腕の振りで「速い球・ゆるい球」
やり方:握りは変えずに、力の入れ具合だけで「8割の球」と「5割の球」を交互に投げる。変化球は投げない。 回数:交互に10球。 親が見るところ:ゆるい球のときに、腕の振りまでゆるんでいないか。 できているサイン:どちらの球も、見た目の腕の振りがほとんど同じ。
④ 牽制動作のゆっくり確認
やり方:一塁を見る→踏み出す→送球、の流れをゆっくり通す。慣れてきたら少しずつ速くする。 回数:10回×2セット。 親が見るところ:あわてて上体だけで投げていないか。 できているサイン:動きが止まらず、最後まで滑らかにつながる。
大事な注意です。肩やひじに痛みがあるときは、ドリルより先に投球を止めて、整形外科へ。私たちフォームの専門家は痛みの診断ができません。投げすぎのサインは球数の目安にまとめています。
やりがちなNG 2つ
NG① わざと角度をつける
踏み出す足をわざとずらしたり、体を早く開いたりして、打者から見た角度を作ろうとする投げ方です。
ボールの勢いが体から逃げるうえ、腕だけで投げる形になりやすく、肩やひじに無理がかかる心配があります。角度は、わざわざ作らなくていいのです。
NG② 「左は荒れ球だから仕方ない」と決めつける
「左投手はコントロールが悪い」というのは思い込みです。左だから荒れる、ということはありません。
制球に効くのは、動作とリリースの安定です。課題は子どもによって違うので、そこを1つずつ直していきます。
投Laboの考え方
身長も球速も足りなかった私が独立リーグまで行けたのは、ずば抜けた才能があったからではありません。「左」という希少性と、それを崩さない投げ方を大事にしたからです。
左投手は、速さだけで勝負しなくていい。希少性・制球・緩急・牽制という、左ならではの戦い方があります。
投Laboが大切にしているのは、根性論ではなく「怪我をさせずに・課題を1つずつ・武器を積み上げる」考え方です。
まとめ
- 左ピッチャー=左手で投げる投手(左投手・サウスポー)。プロの投手でもおよそ3割。
- 有利な理由は①見慣れていない②左打者に強い③一塁ランナーが見える。私の見立てでは、効いているのは角度より希少性。
- クロスファイヤーは左だけの武器でも、万能の決め球でもない。
- 「左は球速が遅い」はデータ上わずかな差。速さ以外の武器で勝負できるのが左の強み。
- 伸ばす順番は正しいフォーム→外角の制球→緩急・牽制。無理な角度づけはしない。
お子さんの「左の武器」が正しいフォームの上で活きているかは、本人にも親にも見えません。伸び悩みの原因は、子どもごとに違います。
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よくある質問
Q. 左ピッチャーは、どれくらいの割合でいるのですか?
プロ野球の投手では、およそ3割が左投げです。一般の人の左利きは1割ほどと言われるので、投手には左が集まりやすいと言えます。
それでも10人に7人は右投げなので、打者にとって左投手は「たまにしか当たらない相手」です。
Q. 速い球が投げられない左の子でも通用しますか?
十分に通用します。左は対戦経験の少なさが武器になりますし、外角・緩急・牽制という"速さ以外の武器"も効きます。
私自身、飛び抜けて速くはありませんでしたが、武器を積み上げて独立リーグまで投げました。
Q. 左投げの子は、みんなピッチャーをやったほうがいいですか?
そうとは限りません。左投げが投手で活きやすいのは確かですが、いちばん大事なのは本人が何をやりたいかです。
外野や一塁で楽しくプレーしている子に、無理に投手をすすめる必要はありません。向いているポジションは左利きは野球で有利?で整理しました。
Q. クロスファイヤーは小学生のうちから練習させるべきですか?
おすすめしません。クロスファイヤーは左投手だけの武器ではなく、制球と球の力がそろって初めて活きる球です。
育成年代は、角度づけより正しいフォーム・外角の精度・緩急を優先するほうが、結果的に長く伸びます。
Q. 左投手はコントロールが悪いと聞きますが、直りますか?
「左は荒れ球」というのは思い込みで、生まれつきではありません。左右で決まるものではないからです。
効くのは、動作とリリースの安定を上げること。何が原因かは子どもごとに違います。考え方はコントロールを良くする方法にまとめています。