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ピッチャーの踏み込み足と膝|着地の「あと」に沈む子の直し方

公開 2026.10.19投手専門コーチ 野村亮太

曇り空の下、少年野球の土のグラウンドで、踏み込み足の黒いスパイクが土ぼこりを上げて着地する瞬間を地面すれすれから横向きに写したアップ

ピッチャーのお子さん。 踏み込む前の足で、ひざがぐにゃっと曲がって沈んでいませんか。

「前の足で壁を作れ」とよく聞くけれど、どういうことか分かりにくいですよね。

結論: 大事なのは、着地した「あと」です。着地の「瞬間」の角度は気にしなくて大丈夫。着地のあとに前のひざが前へ折れて沈むと、ためた力が地面に逃げます。前の足で「壁」を作れるかが勝負です。

私は元独立リーグの左腕で、いまは投手専門のコーチをしています。 根性論ではなく、体の使い方と科学の両面から見ていきます。

この記事でわかること

  • 踏み込み足の膝で本当に見るべき場所(着地の「あと」)
  • 膝が沈む子の原因と、家でできるセルフチェック
  • 前の足で立てる体をつくる練習ドリル

踏み込み足の膝は「着地したあと」に沈ませないのが正解

まず、いちばん大事なことからお伝えします。

踏み込み足(前の足)の膝で見るのは、着地した「あと」です。

着地した「瞬間」の膝の角度は、あまり気にしなくて大丈夫です。 研究でも、着地の瞬間の膝はおよそ40〜50度ほど曲がっていると報告されています(個人差はあります)。

ここで言う「沈む」は、着地の直後に少し曲がることではありません。 支えを失って、ボールを離すまで膝が折れ続けてしまうことです。

見るタイミングようすここで見る?
着地の「とき」膝は曲がる(約40〜50度)球速の差にはつながりにくい
着地の「あと」◎膝が沈まず支える=「壁」ここが勝負
着地の「あと」✕膝が折れ続けて沈む力が逃げる

前の足が「壁」になると、前へ進む体の勢いがそこで止まります。 止まった勢いが、上半身の回転に変わってボールへ伝わります。

逆に膝が折れ続けて沈むと、せっかくの勢いが地面に逃げてしまいます。

現場から: 私が動画でまず見るのは、前の足の着地のしかたと、ボールを離す瞬間の膝の角度です。着地してからリリースまで、膝が支えられているかを確かめます。

成人を対象にした研究では、前の足の踏ん張る力と球速に強い関連が報告されています。 腕の振りや後ろ足の蹴りだけでなく、前の足の「壁」も、球速を支える大事な土台だと考えられています。

こんな「前の足」、気になっていませんか

キャッチボールやブルペンで、お子さんの前の足を見てみてください。 次のようなクセは、よく見られます。

  • 着地のあと、前の膝がぐにゃっと曲がって沈む
  • 膝が外側に割れる
  • 着地でぐらついて、体が流れる
  • かかとからベタッと着いている

上の3つは、前の足で止まれていないときに出やすいサインです。 いちばん下の「かかとから着く」は、私が指導でいっしょに気にして見ている点です。

一つでも当てはまったら、この先を読んでみてください。

踏み出す足が外や内にズレて着く(向きのクセ)が気になる場合は、踏み出し足の向きの記事もあわせてどうぞ。

なぜ前の膝が沈むのか|よくある原因

原因は1つではありません。 子どもによくあるのは、次の3つです。

前のひざは着地の「とき」より「あと」が勝負。着地のときはだれでも40〜50度ほど曲がるので差は出ない。着地のあとに膝が沈まず支えて壁になるか、前に折れて沈むかで、力が地面に逃げるかどうかが決まる

1. 前の足の筋力が、まだ育っていない

小学生・中学生は、体がまだ成長の途中です。 前の足1本で体を支える筋力が、追いついていないことがあります。

すると、着地のあとに膝が耐えられず、沈んでしまうことがあります。 私の指導では、こういう子にはフォームの確認とあわせて、前の足で立てる体づくりも取り入れます。

2. 歩幅を広げすぎて、届かせにいっている

遠くへ踏み出そうとすると、体が前のめりになりがちです。

現場から: 私の指導では、本人に合わない広さで前のめりに崩れている子は、歩幅を少し狭めて試します。無理に広げるより、前の足でしっかり止まれる位置のほうが、力が逃げにくいと感じています。

歩幅は自分で広げるものではなく、しっかり踏ん張れた結果として伸びるもの。 くわしくは歩幅(ストライド)の記事にまとめています。

3. かかとから着いて、踏ん張りが遅れる

現場から: 私がよく見るのは、かかとから着いてしまって、膝が曲がりすぎるクセです。かかとから着くと、足の裏全体が地面につくまでに少し時間がかかります。その間に、前の膝が折れてしまうのです。

※これは、すべての子に当てはまる決まりではありません。私が指導で感じていることです。着き方と膝の関係は、まだ研究ではっきり分かっていません。

実際に、こんな子がいました。 小学4年の右投げの子で、足の裏全体でちゃんと着いているのに、着いた「あと」に膝が前へ折れて、離すまで戻らないのです。

こういう場合は、着き方よりも「前の足で受け止める力」から見ていきます。

🔍 家でできるセルフチェック

スマホのスロー動画があれば、今日すぐ確かめられます。 横から(グラブをはめる手の側から)、ゆっくり撮ってみてください。

見るのは、着地した「あと」です。

スマホで見る前の足の壁チェック。1着地したあと前ひざが前へ折れて沈まない、目安はスロー再生で10球中8球。2着地のあと頭が前の足の上まで来る、横から3〜5球で確認。3かかとからベタッとでなく足の裏全体で着く、左右で2〜3球ずつ見くらべる

次の3つを目安にしてみてください(合否ではなく、だいたいの手応えでOKです)。

  • ①:着地した「あと」に、前の膝が前へ折れて沈まない(スロー再生で、10球見て8球くらい)
  • ②:着地のあと、頭(または胸)が前の足の上まで来る
  • ③:かかとからベタッとでなく、足の裏全体で着いている(これは私が気にして見ている点です)

全部そろわなくても、心配いりません。 前の足の力は、少しずつ育っていきます。

親が見るポイントは「着いたあと」です。 着地の瞬間ではなく、そのあと膝が沈まずに支えられているかを見てあげてください。

ここで1つ、気をつけてほしいことがあります。 お子さんに「膝を伸ばして着地しなさい」とは言わないでください。

着地の瞬間は、だれでも膝が曲がるものです。 無理に伸ばそうとすると、棒のように突っ張った、硬い着地になってしまいます。

伝えるなら「前の足でピタッと止まって、頭を前の足に乗せる」。 これくらいがちょうどいいのです。

ここまでで、「沈んでいるかどうか」はおうちでも見えてきます。 ただ、その先の「なぜ沈むのか」までは、肉眼ではむずかしいのが本音です。

原因が筋力なのか、歩幅なのか、着き方なのかで、やることは変わります。 同じ「沈む」でも、子どもによって本当にさまざまなのです。

まずは家でスロー動画を撮ってみてください。 撮り方は投球フォームの撮り方の記事にまとめています。

🏋️ 前の足で立てる体をつくるドリル

前の足の「壁」は、技術だけでなく、前の足で立てる“体”づくりもあわせると安定しやすいと感じています。 特別な道具はいりません。いつもの投球練習とは少し違う動きです。

全部やる必要はありません。 お子さんに合うものを選び、痛みが出たら回数の途中でもやめてください。

自宅のリビングで、子どもが後ろ姿で片足を前に踏み出すランジ練習をし、手前で親がスマホを構えて撮影している様子

1. 片足で着地してピタッと3秒

ゆっくり踏み出して着地し、前の足1本で3秒止まります。 膝が前に折れず、頭が前の足の上に乗る位置で静止します。

  • 回数:左右 5回 × 2セット
  • 親のチェック:着地のあと、膝がぐらつかず止まれているか
  • できているサイン:ふらつかず、3秒ピタッと立てる

2. 横向きジャンプで前の足に「ピタッ」

横に小さくジャンプし、前の足1本で「静かに」着地して3秒止まります。 ひざと股関節を軽く曲げてやわらかく受け止め、そのあとピタッと止まるのがコツです。

  • 回数:左右 5回 × 2セット
  • 親のチェック:着地の音が小さく、そのあとふらつかず止まれているか
  • できているサイン:静かに止まり、体が流れない

3. 後ろ足を台にのせた片足スクワット(ブルガリアンスクワット)

後ろの足を低いイスや台にのせ、前の足1本でゆっくりしゃがみます。 前の膝が、つま先より大きく前に出ないように気をつけます。

  • 回数:左右 8回 × 2セット(まずは少なめから)
  • 親のチェック:膝が内側に入らず、前の足で支えられているか
  • できているサイン:ぐらつかず、前の足のお尻・ももに効く
  • 注意:自重でもふらついて難しい子がいます。まずは動きを見てあげて、安定してできる範囲で。痛みが出たら中止してください

4. ランジ(前に踏み出す)

その場から前へ一歩踏み出し、前の足でしっかり受け止めます。 前の膝が、つま先の上あたりで止まるのが目安です。

  • 回数:左右 8回 × 2セット
  • 親のチェック:着地のあと、上体がぐらつかないか
  • できているサイン:前の足1本で、体をまっすぐ支えられる

これらは「前の足で立てる体」をつくる土台です。 自重トレの進め方は自重トレーニングの記事も参考にしてください。

やりがちなNG|「広く」「低く」で前の足が沈む

よく言われる「歩幅を広げろ」「低く投げろ」。 でも、これが前の足を沈ませる原因になることがあります。

「広く」しすぎ

遠くへ届かせようとすると、体が前のめりになりがちです。

現場から: 私の指導では、歩幅が本人に合わず前のめりに崩れている子に、「歩幅を半歩せまく」と伝えます。無理に広げるより、前の足でしっかり止まれる位置のほうが、力が逃げにくいからです。

歩幅は、広げるものではなく「結果として伸びる」ものです。

「低く」しすぎ

低く投げたいとき、膝を沈めて低くすると折れやすくなります。 私は、膝を沈めすぎて低くしている子に、上体を少し前に傾けて低さを出すよう伝えることがあります。 無理に深く倒すわけではありません。

下半身全体の連動は下半身の使い方の記事にまとめています。

「伸ばせば速くなる」は、ちょっと待って

「膝をしっかり伸ばせば速くなる」と、単純に考えないでください。

高校生を調べた研究では、前の膝をよく伸ばす投げ方は球が速くなりやすい一方で、ひじへの負担も大きくなる傾向がありました。 だから“伸ばすこと”を目標にするより、まず沈まない体をつくるのが先なのです。

痛みが出たら、投球を止めて受診を

練習の前に、1つだけ守ってほしいことがあります。

すでに肩やひじ、腰や膝に痛みがあるなら、投球を止めて整形外科へ。 「少し痛いけど投げられる」は、様子見にせず相談してください。

成長期の子どもは、投げすぎが故障の一番の原因です。 1日の球数と、しっかりした休みを大切にしてください。

正しい投球フォームの全体像は、投球フォームの基本5ステップにまとめています。

まとめ

踏み込み足の膝で見るのは、着地の「あと」です。

  • 大事なのは、着地のあとに膝が沈まず「壁」になること
  • 沈む原因は、前の足の筋力・広げすぎ・着き方などさまざま
  • まず作るのは、前の足で立てる体(スクワットやランジ)

今日のキャッチボールから、スロー動画で「着いたあと」を見てあげてください。

そのうえで「なぜ沈むのか、原因が分からない」と感じたら、一度フォームを動画で見せてください。 投Laboでは、初回の動画分析を無料で行っています。

横からと後ろからのスマホ動画で、前の足の着地と膝の動きまで見ます。 そして、今いちばん直すとよい「1つ」をお伝えします。

気になる方は、無料フォーム分析からお気軽にどうぞ。

よくある質問

Q. 前の膝は、少し曲がっていてもいいのですか?

はい、着地の瞬間は曲がっていて大丈夫です。 大切なのは、着地した「あと」に膝が前へ折れて沈まないこと。 むしろ「まっすぐ伸ばせ」と無理をさせないであげてください。

Q. 「前の足で壁を作れ」と言っても、子どもに伝わりません

言葉と、実際の動きはよくズレます。 私は「つま先で着地するつもりで」と伝えます。 そう意識すると、実際には足の裏全体でちょうどよく着けることが多いからです。

Q. 低学年の子に、ブルガリアンスクワットはやらせていいですか?

重りは使わず、体重だけで行えば取り組めます。 ただ、自重でもふらついて難しい子もいます。 まずは動きを見てあげて、安定してできる範囲で。痛みが出たら、すぐにやめさせましょう。

Q. 前の膝が「外に割れる」のも、沈むのと同じ原因ですか?

近い部分もありますが、同じとは限りません。 外に割れるのは、踏み出す方向や股関節の使い方が関わることもあります。 気になるときは、動画で踏み出しの向きから見ていくのが確実です。

Q. 前の足を直すと、球速は上がりますか?

上がる子もいますが、「膝を伸ばせば速くなる」という単純な話ではありません。 まずは力が逃げない、安定した着地を目指すのが先です。 速さだけを追うと、ひじや肩の負担が増えることもあります。